5日目
ティルマライナーヤカ宮殿に行く。
入場料が100ルピーだったが、手元には500ルピーしかない。
「お釣りくれ」
と言ってみたものの、
「ねーよ、んなもん」
と追い返される。
インドの面倒くさいところは大きいお札を渡すとお釣りが無いと言われることである。
500ルピーというと800円くらいである。
800円でお釣り無いのかよ、日本だと100円の買い物する時に10000円札出してもちゃんとお釣りくれるぞ、とか思うのだけれど、ここの国の文化なので仕方ない。
財布の中を必死に漁るもお金は無い。
右往左往しているとタクシーの運ちゃんがお釣りくれる場所を探してくれた。
水を買ってお金を手に入れる。
さりげなくお釣りの一部を運ちゃんがネコババしていたのが見えたが、
まあ50円くらいだし、良いかと思ってあえて指摘はしなかった。
いや、しかし、今思うと指摘すべきだった。
気を取り直して宮殿へ。
ここはイスラム建築とヒンドゥー建築の融合型らしい。
確かに今までのゴープラムとは見た目が違う。
ベルセルクっぽい。
ここにすんでた城主は、ムガル帝国の侵攻をはねつけたらしいが、
それなら何故建築がイスラム様式になっていたのかは謎である。
タンジャーヴールの王宮に行った時も思ったけど、インドの観光地は寺院とそれ以外で顕著に人の入りが違う。
この宮殿にもほとんど人がいなかった。
寺院にはあれだけ沢山人が集まっているのに。
この時またインド人に話しかけられた。
「何処から来たんだ?」
こんな事を聞かれると、何かを売られるんじゃないかと身構えてしまうが、
実際に雑談をしにきただけの良いおじさんだった。
おじさんはケーララから来たらしい。
「ケーララは良いところだから来いよ!」
と言われる。
インド人は郷土愛が強い人が多いような気がする。
他の土地からやってきた人は大体自分の故郷の良さを語って行く。
電車であったデリーのおじさんもそうだった。
ついでに帰りにもう一度ミーナクシーアンマンに寄る。
ここの周辺は完全に観光地化されているのか、やたらと話しかけてくる人が多い。
「ヘイ! ジャパニ、ジャパニ、ジャパニ!」
「コニチワ! コニチワ!」
「ちょっと俺の店によっていけよ!」
最初はちょっと寄って行ったりしたが、あまりに多いので途中から無視するようにした。
ここで日本から持ってきたカロリーメイトとかのお菓子を乞食に配っていたりした。
インド食は危ないと聞いていたので、やばそうならカロリーメイトでしのごうと思って8個分くらい持ってきたのだが、インド料理が存外清潔で美味しかったので、ほとんど食べず終いになっていた。
どうせ持っていても意味が無いのでその辺の乞食に配りまくる。
今思うと、カロリーメイトに動物の何かが成分として入っていたら宗教的に好ましくないなとも思うのだけれど、この時は何も考えていなかった。
ホテルに戻って空港に向かう支度をする。
マドゥライ空港は最近出来たらしく、かなり清潔だった。
空港内に鳩が住み着いていたりはしたが。(ちなみにチェンナイ空港にも鳩が住み着いていた)
空港から飛行機に向かうバスでは、インド人が子連れや妊婦に席を譲りまくっていた。
インドの市バスでは全く見られなかった光景!
矢張り飛行機に乗れるような富裕層は精神の余裕が違うのだろうか。
飛行機に乗ると隣のおじさんが話しかけてきたが、かなり訛った英語だったので全く聞き取れず、会話が成立しなかったので、諦めた。
無事チェンナイ着。
チェンナイ空港からはプリペイドタクシーで市内へ。
500ルピー。結構安い。
ヴィヴァンタ・バイ・タージ・コネマラというホテルに泊まる。
ここは5つ星の高級ホテルだったが、コンセントが3つ中2つ壊れているとかで微妙だった。
まあどうせ1つしか使わないのだが。
しかし、シャワーから温水が出てきたのには感動した。
インドでは5つ星にならないとシャワーからはお湯が出てこない。
3つ星ホテルだろうと水しか出てこないのだ。
夕食を食べているとウェイターのお兄さんに話しかけられまくる。
「どうだ、美味しいか?」
「あまり進んでないじゃないか、これ好きじゃないのか?」
ナドナド。
落ち着いて食わせてくれ。
このお兄さんも北インド出身らしい。
ブッダガヤは良いところだから来いよと言っていた。
6日目
次の日はショッピングモール回りをした。
本当は博物館に行こうと思っていたのだが、生憎休館。
砦博物館も休館。
何と運の悪い。
仕方ないのでお土産を買い漁る。
チェンナイの大きなモールに
スペンサープラザとエクスプレスアベニューというのがある。
スペンサープラザは100年以上も歴史のある古いモールらしくて、確かに全体的にボロかった。
というか小店がごちゃごちゃと並んでいて迷路だった。
何処に何があるのか全く分からないカオス。
エクスプレスアベニューの方は2年前に出来たらしく、もっと整然としていた。
日本やアメリカのモールに近い。
テロ対策なのか、入るには金属探知機を通過しないと行けない。
結構ザルだったけれど。
チェンナイの書店でマハーバーラタのカルナが主人公の「死の征服者」を探したけど見つからなかった。
3つくらい回って書店員に聞いたが、無いとの事。
古い本だからもう絶版なのだろうと思った。
最初に聞いた書店のおじさんは、
「お、カルナを探しているのか? HAHA! 俺が探してきてやる。ちょっと待ってろ」
みたいな感じで気さくな良い人だった。
インド人は基本的に良い人だと思う。
観光客をカモる人を除いて。
タクシー(リクシャー)ドライバーと土産物屋はやたらとカモりたがってくる。
日用品とか書店の店員は皆良い人なのだが。
全体的にチェンナイの本屋は大きくない。
インドでは出版産業はそれほど活発ではないのだろうと思った。
インドの本もあったが、外来(英語)の本も多かった。
インド独自の文化が強すぎて他国の文化が入ってくる余地が無い、なんて思ってたけれど意外とそうでもないのかも?
でもバスとかレストランで流れていた音楽はひたすらインド系だった。
このモールには、バーガーキングとかピザハット等の量販店もあった。
食べはしなかったが。
買った本は四冊。
ヴィヴェーカーナンダの絵本とオーロビンド・ゴーシュの書いたマハーバーラタ、ラーヴァナの絵本と、タンジャーヴールのブリハディーシュワラ寺院の写真集。
ラーヴァナの絵本は、ラーヴァナが何故か良いやつになっている絵本だったのでつい買ってしまった。
ラーヴァナが熱心なシヴァ信奉者だったというお話。
本は絵本が一冊300円で、モノクロの本なら150円というやすさ。
この後、タクシーで空港へ向かった。
途中車とぶつかりそうになって、隣のドライバーと口論を開始しはじめた。
タミル語だから、何を喋っているのかは全く分からない。
空港に着く。
インドの空港は入り口の前に軍人が立っていて、パスポートと航空券を見せないと入場できない。
やはりテロ対策などで入場制限が厳しいみたいだ。
それ以外にも持ち物検査場など色んなところに軍人がいる。
インド軍は100万人以上成員がいる大軍隊だけれど、警備員のような仕事も多いのだろうと思った。
出国審査もあっさり終わって飛行機に乗った。
さらばインドよ。
また来る日まで。
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