インド・タミル・ナードゥ州旅行記(2日目)

2日目

 あまり眠れなかった。
 朝ごはん。
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 朝からリクシャを使って、バス停まで移動する。
 リクシャの運ちゃんに、バス停を聞くと、何も無い平地に案内される。

「本当にここにバスが来るのか?」

 と訝ったが、直後にその運ちゃんが

「バス来たぞ! 乗れ! 乗れ!」

 と叫ぶ。

 (本当に来た……!)

 とりあえずこれでポンディシェリーまで行く。60ルピー(約100円)。
 バスで二時間乗って100円なので死ぬほど安い。

 エアコンが効いていないバスなので暑いのかとおもいきや、バスの上部は上手く遮光されている上、窓から風が入りやすい構造になっていて、意外と暑くない。
 というか涼しい。砂埃はあるけど。
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 途中、バスが一時停止で休憩する。
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 社内アナウンスは一切無し。
 何分停車するのかの説明一切無し。
 そして何分かしたら再び動き始める。
 今から発車するぞ、等の説明は一切無し。

「取り残される人はいないのか?」

 と不思議に思った。
 しかも標識がなくてバス停がどこにあるのか全然分からない。
 インドに英語が通じる人がいなかったら詰んでいたと思う。
 タクシーの運転手もそうであったが、インド人はゴミを窓から捨てる。
 成る程、だから街がそこら中ゴミだらけになるのだな、と思った。

 インドの道路交通は超危険だった。
 インドは、治安、疫病、衛生、動物などなど色々脅威があると言われているが、自分がダントツに脅威と感じたのは、道路交通だった。
 インドのバスは危険運転で、二車線で対向車がバンバン来てるのに対向車線にはみだして追い越しをする。
 なので、一時的に順方向にも逆方向にも二車線ともに車が走っている状況が発生する。

 車線も基本的に無視で、二車線しか無い道路に三台車が並走していたりする。
 百聞は一見に如かずということで動画を見ていただけるとわかりやすい。

以下リンク
交通事故死者数世界No1 インド チェンナイの危険な衝突寸前ドライブ(でも現地では普通)【再編】

なんでこんな危険な運転をするんだ……?
こいつ……、死ぬのが怖くないのか?

と思った。
インド人は輪廻を信仰しているから死が怖くないのかもしれない(適当)
 個人的には、ディズニーランドでビッグサンダーマウンテンに乗るより、
 インドでバスに乗った方が遥かにスリルを味わえると思う。

 ポンディシェリーに着く。
 地球の歩き方には「元フランスの植民地の異国情緒漂うオシャレな街」と書かれていたので、今までのインドの都市より綺麗な都市だと期待。
 しかし、実際には……。

 汚っ!!
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 そこら中にゴミは散乱しているし、排気ガスと砂埃の嵐。

「今までのインド都市と全く同じじゃんか!」

 そう思った。

 気を取り直して、バスにもう1回乗る。

 今度はチダンバラムへ。
 いくらだったか覚えてないけど、30ルピーくらいだった気がする。
 大体50円くらい。

 またもや交通はカオス。
 追い越しは当たり前で、図体の大きなバスが猛スピードで前の車両を追い越そうと車線をはみ出してくる。

(やばいやばいぶつかる死ぬ……!)

 と、何度思った事か。
 しかし不思議な事に何故かぶつからない。
 運転手の超絶テクで、後30cmくらいで人轢いているんじゃないかと思われるような状態になるも、上手く避けている。

 バスの運転手は運転中に当たり前のように携帯に出て話をしている。
 その間もクラクションを鳴らしまくる。
 前方50メートル以内に、人が来たら鳴らす、車が来たら鳴らす。
 牛や犬が来ても鳴らす。

 (犬にもクラクション鳴らすのかよ……。)

 と思ってしまったが、音だから動物も反応するだろうし、合理的な事なのかも。

 チダンバラムに着く。
 この街も超絶汚い。
 バスターミナルの側に沢山屋台はあったが、こんなところで食べたら絶対に腹を壊すと思った。
 近くに綺麗目なホテルがあってそこで食事を取る。
 ドーサがかなり美味しい。
 しかも料金は100ルピー(約160円)。

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 両替所が近くにあるそうなので、ルピーを両替しに行くも、途中の道路が危険過ぎて死を何度か覚悟した。
 大量に車やバイクが走っているのに横断歩道は無い。
 車も当然止まる気配を一切見せないのでタイミングを見計らって渡るしかない。
 バイクも、人が渡るのを見るとクラクション鳴らすので、クラクション慣れしていない日本人は慌てる。

 何度も死の危険を感じながらも、何とか両替所に着く。
 レートは空港よりかなり良かった。
 空港で3万円両替すると、15400ルピーだったが、
 両替所だと17400ルピーになった。

 ところで、この街で見た求人広告には一週間の給料が「3500ルピー(約5000円)」と書いてあった。
 インド人水準でどのくらいの高給なのかはわからなかったが、広告が英語である以上高めの水準なのだろうと思った。その基準で行くと、自分の財布にはインド人二ヶ月分の給料が入っているんだなと思った。

 腹ごしらえしたところで、再びバスに。
 クンバコーナムに行きたかったが、直通便が無いとの事なので、よく分からない都市行きのに乗る。
 このバスは混雑していて、直射日光が照りつける、物置のような席に座らされたのでキツかった。
 謎都市で乗り換えて、クンバコーナム行きのバスを探す。
 このバスはそこまで混雑していなかったが、運転が荒すぎて何度か頭を窓にぶつけた。
 隣に座っていたインド人が話しかけてくる。

「チダンバラムのナタラージャ寺院には行ったか? タミルナードゥ州で最高の寺院だぞ」

「日中で空いてなかったから行かなかったんだ」

 というと相手は残念そうな顔をする。
 代わりに、マドゥライのミーナクシーアンマンに行こうとしている事を伝えると

「その寺院は知らない」

 と言われる。
 本当に知らないのか、単に発音の問題で通じなかったのかは定かではない。

 ようやくクンバコーナムに着く。
 ラヤズグランドというホテルに荷物を置いて、世界遺産「ダーラースラム」へ行く。
 ホテルから4kmで50ルピー(80円)。死ぬほど安い。
 あまりにも安すぎるので30ルピー多めにあげた。
 インド人はお金を多めにあげると大抵満面の笑顔を浮かべる。

 この街は、砂埃が一番酷かった。
 タクシーに乗って10分移動するだけで、頬がザラザラするようになった。
 街にもゴミがあふれていたし、汚さで言うと自分が行った中では最大級。

 ダーラースラム寺院に着く。
 寺院の側では子どもたちがボール遊びをしていて、完全に近所の公園扱いだった。世界遺産なのに。
 入場料もタダだったし、観光地として全く整備されていない。
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 寺院には靴を脱いで入らないといけない。
 子供がいて「靴を見ておいてやるから金をくれ」と言われる。
 小銭が無いので20ルピー渡しておいた。

 12世紀中頃の遺跡らしい。
 裸足で寺院内を歩くと古代インド人の気持ちになったようで気分が弾む。
 かなり熱いが。
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 寺院内では僧侶っぽい人が半裸でマントラを唱えていた。
 額にシヴァの印を付けてもらった。
 シヴァ神の印である白い横線を三本と、真ん中に赤い点が描かれた模様。
 火の回りに手を当てて、その熱気を額に浴びせる。
 ここ、かなりインド度高い。

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 「今から俺の言うようにマントラを唱えろ」

 と僧侶に言われる。

 「オーム。ナマーシヴァー」

 これはシヴァ神を称えるマントラでCDでも聞けるものだ。
 マントラを唱えろと言われた寺院はここだけだったので、一気にヒンドゥー教の儀式に対して親しみを覚える。

 でも、シヴァリンガを見て、神に対する信仰心が芽生えたとかそういうのは全く無かった。
 僧侶達は流石に敬虔な感じがしたが、一般信者たち、特に子供は、慣習として祈っている感じがした。

 宗教というのは思想というよりも慣習として存在しているんだとは思った。

 この後、クンベーシュヴァラ寺院に移動。
 ここでは入り口に象がいた。
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 リズミカルに頭を振っていて、首にかけた金属の飾りを音を鳴らしている。
 それが何とも音楽的で心地よい感じがした。
 象の鼻のところにお金を入れると、象が頭をなでてくれる。
 象は優しく撫でているつもりなのだろうけれど、結構重みがあって、象の力強さを感じた。

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 「嗚呼! 象! 偉大なる象の力!」

 この時から象良いわ〜、と思うようになって、象グッズを買い漁るようになった。

 ここも本尊はシヴァリンガだった。
 外国人が珍しいのか、結構ジロジロ見られるので、

「本当にここに居て良いのか?」

という気持ちになった。
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 凄まじいアウェー感。
 しかし、特に何かを言われるわけでもない事が分かったので、ずんずんと奥に進む。
 マントラが始まるとヒンドゥー教徒たちは一斉に本尊の方へ向かって合掌する。
 神に対して真摯に祈る人たちを真似して合掌したりするものの、あまりにじろじろ見られるので宗教的な気持ちよりはアウェー感が先行した。

 ホテルに戻ってご飯。

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 ここのドーサはそこまでおいしくなかった。
 トマトスープは美味しかったけど。

 インド人の従業員は基本的に雇用が余っている感じがして、かなり暇そうだった。
 ウェイターもやたらと話しかけてくる。

「どうだ? 旨いか?」

 など。
 食べるのが遅いと、

「あまり食べてないじゃないか? 嫌いなのか?」

 などなど。
 日本でこんなこと言われたら、

「静かに食わせてくれ」

 という感じだろうけど、現地の人にやたらと話しかけられるというのもインドの魅力なのかもしれない。

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